青ペンギンの日記

i46bは基本的に漫画や小説のレビューをします。時として思索した跡を残していくと思います。

【感想】わたし、二番目の彼女でいいから。

早坂さん壊れちゃう……

 

 

2巻もすごい面白かった

 

こういった主人公が1人だけの想わなければならないヒロインがいながらも、他のヒロインに言い寄られて不誠実な行動をしてしまうような作品において、なぜか主人公の男は両ヒロインに対して誠実であろうとする。誠実であろうとするために破綻してしまうという作品が多い。なんで主人公が下手にヒロインに対して誠実であろうとするのかまったく理解できない。

ところがこの主人公は逆に誠実であろうとはしていない。ヒロインに対して受動的。ヒロインに強く押されれば流されてしまうのだ。むろん彼自身も行動したりするが、それはヒロインの好意に対して誠実であろうとするからではない。打算的であったりもする。

また、一触即発の四角関係に対しても、なんとか乗り切れるだろと変に前向きなんですね。むしろ主人公は純愛物語は純愛物語で自分とは違うと取っている。正直クズ。なんせ、修羅場手前まで来ていても、なぜこうなってしまったのかという懊悩がほとんどない。ヒロインのどちらかを彼女にしろと選べないし、なんならどっちも彼女にしたいと思ってる節がある。

でもそんな主人公だから許せてしまう。誠実であろうとするクズよりも、まるでそうあることが自然であるかのように振る舞う主人公は、どこか物語に動かされる機構のようである。物語を動かすのはヒロインであって、主人公じゃない。

 

前巻に引き続きセンシティブな描写にかなり力が入ってた。かなりギリギリを攻めていた。ときどき同人エロCG集とか、エロゲの前戯シーンのテキストを読んでいるような感じ。まだ直接の行為に及んでいないものの、この先どこで踏み切るかわからない良さがある。ただ得てしてこういうのを扇情的に描く作品はいざ本番に至ると途端にエッチくなくなるので、実際そうなるとどうなるか不安ではある。

 

2巻になって常識的なキャラが出てきてくれたのが良かった。主人公もヒロインもかなり破滅的な性格をしているため、読んでいると良識が侵されていく。それに対しておかしいと言えるキャラがいると、笑えるし安心する。こういうキャラクターが必要だったんだな……

 

主人公が受動的ではあるけれど、最後のラインを踏み込ませない。一方で早坂さんは暴走してその踏み越えたい、踏み越えることで承認を得たい。しかし、もう一人のヒロインである橘さんは主人公の惚れた弱味もあってどんどん追い込んでくる。早坂さんはさらに余裕がなくなり、精神的に壊れていく。これが基本的な構図。

いやぁ、主人公がパーフェクトプランだってドヤッてるところに橘さんが暴走して全部ぶっ壊すの最高!

こういう風にして早坂さんが壊れていくの、気持ちいいので続きも楽しみだ!

【感想】劇場版 呪術廻戦0

12/29に観た

 

jujutsukaisen-movie.jp

 

原作既読

 

話の内容

幼少のころ、幼なじみの祈本里香を交通事故により目の前で失った乙骨憂太。

「約束だよ 里香と憂太は大人になったら結婚するの」

怨霊と化した里香の呪いに苦しみ、自身の死を望む乙骨だったが、
最強の呪術師・五条悟によって、呪術高専に迎え入れられた。

そして、同級生の禪院真希・狗巻 棘・パンダと出会い、乙骨はある決意をする。

「生きてていいって自信が欲しいんだ」
「僕は呪術高専で里香ちゃんの呪いを解きます」

一方、乙骨たちの前にかつて一般人を大量虐殺し高専を追放された最悪の呪詛師・夏油 傑が現れる。

「来たる12月24日 我々は百鬼夜行を行う」

呪術師だけの楽園を標榜する夏油は、非術師を殲滅させんと、ついに新宿・京都に千の呪いを放ち――

果たして、乙骨は夏油を止められるのか、
そして、里香の解呪の行方は‥‥。

(公式サイトより引用)

 

正直なところ原作の方が好き

 

原作の漫画は主人公の乙骨憂太が友人を作り、その過程で自分が生きる意志を持つようになるという本筋ですっきり収まっているもので、私はその簡素さが好きだからだ。だからこそ、クライマックスにあたる百鬼夜行のシーンは、乙骨憂太が仲間をボコボコにされたのを契機に覚醒するところが映えるのだ。

では映画の方は、つまり百鬼夜行のシーンに色々なものが付加されているのだ。呪術本編で登場したキャラたちのこのころの描写や、他キャラの戦闘シーンの増強をしている。乙骨の物語として触れていた私にとってノイズになってしまった。

 

しかしながら、作画は綺麗であり、一つ一つの描写をかなり丁寧に描いていた。特に戦闘シーンにはかなり力が入っていたと思われる。また、音楽も楽しかった。主題歌が良いのは言うまでもないが、BGMとしてときどき歌のある曲を用いて印象的に見せ場を描いていた。

 

 

この映画は単体で楽しむことが十分に可能だ。だが、本編があるからこそ、その内容を知っているからこそ楽しめる要素を多分に含んでいる。例えば、動く冥冥さんとか見れて楽しいとか。これは呪術廻戦というシリーズ全体の中に、0を浮かせずキレイに組込めているのを意味する。呪術廻戦の原点から、本編の過去編(つまり補完)へと。

しかし、私が好きなのは本編を知らなくても、あの単行本1巻で無駄な要素なく完成されていた原作が好きで、乙骨憂太が好きで、彼の成長譚を観たくて行ったので、ちょっとがっかりした。

【感想】わたし、二番目の彼女でいいから

Re岳先生がラノベの装画と挿絵を担当してるっ!?!?!?!?!?!?!?!?!?

 

 

ちょっとミステリーやりたいのかな

 

内容をざっくり言うと、「主人公の桐島くんは橘さんが本命で、早坂さんのことが二番目に好き。早坂さんはある人が本命で、次に桐島くんのことが好き。そういう二番目同士で付き合っている。二番目に好きだから二番目なりに誠実に付き合いたいけど、本命は他にいて、それに後ろ髪を引かれたりもする。本命が他にいるから、互いに本命への恋を応援する」という感じの話。

つまりは
??


橘さん           ??
↑(1)                   ↑(1) 
桐島くん←(2)→早坂さん
って図式が最初に提示される。

この作品の面白さはこの最初に提示された人間関係が段々違うものに変わっていくことですね。感情の矢印がどんどん変わっていく、あるいは今まで話題にされなかった故に本当のものが見えてくる。そういう風に関係性が開示されていくうちに、主人公が徐々に退っ引きならぬ事態に陥っていて、1巻の終わりには地獄の様相を呈してましたね。
まぁそういうのが好きなので笑顔でいただきましたが。

演出としての設定の見せ方も良いんですね。ミステリー風味というか。最後の最後に全部ひっくり返すようなやつじゃなくて、こまめにそういう要素を持ってくる。主人公の桐島くんはミス研に所属してたり、作中作もミステリーだったり、そういうのが好きなんですね。それを足掛かりに次の話の展開へと持っていくのも上手くって、まったく飽きさせなかった。

要所要所でエロ漫画みたいな展開というか、そういうのを思い出すような展開があったのも個人的には嬉しいですね。ラブコメじゃないから、じとっとしたそういう湿っぽさがある。イケないことって気持ちいいんだろうね。

ただ個人的に気になるのが、早坂さんがなんで主人公のことを二番目に好きなのかなってところ。一番の人に対しては憧れとかなんだろうなぁってわかるけど、じゃぁ桐島くんとかいうメガネがなんで二番目なの?って。ちょっとだけ言及があったけど、いまいち腑に落ちない。でも早坂さんが桐島くんとその憧れの人のどっちが一番好きなのかわからなくなる描写があったし、単純接触効果のせいにしてもいい気はしてくる(微ネタバレ)。早坂さんが、どんどん嫉妬とかの感情で混乱していって病みかけていく様は見ていてとても気持ちいいので、いいぞ!もっとやれ!です。

 

この作品のおかげでしばらくの間、感情がグチャグチャになったし、次巻予告もあったし、続きの気になる作品でした。

【感想】処刑少女の生きる道 6 ―塩の柩―

アニメ化するらしい

思えば文章が理屈っぽいのでアニメだとキャラクターの感情に想像がもてるかもしれない 

 

  

全編通して面白かった。残りが沢山あると頭でわかっていながら次のページでは完結してるんじゃないだろうかと思うほどのギリギリな状況が続いていた。それでも目の前で劇的に変わっていくキャラクターと戦況に目が離せなかった。今までで一番読むのがしんどかったけど、満足度もかなり高い

 

それと今回は今まで隠されていたことが次々と開示されていって、世界観がさらに広がりを見せていった。次の巻でもどうなるか気になる

 

少なくとも大きな区切りがついたことは確かで、第1部完!って言っても過言ではない。大きな変化は旅の目的そのものが変わったこと、メノウに立ちはだかる最終的な敵が変わったこと、目的を共有する人が変わったことかな。
特に新たに同行することとなった人物が面白くって、いい意味で期待を裏切られたような。というのも人災(ヒューマン・エラー)が元の人格を取り戻さないと思っていたからその裏をかかれたから。万魔殿ちゃんすごい好きだったので、マヤになってマノンの服着てって感じのエモエモな変化すごいいいぞ。(ここまで反転)さらには他の人災(ヒューマン・エラー)まで動き始めていてワクワクが止まらない

 

導師との関係にもケリがついて、その感動も一入。お前も人間だったんだな…キラーマシーンかなにかだと思ってたよ…

 

世界観により広がりが生まれた一方でメノウのおかれる状況はより絶望的になり好転する余地が見出せないけれど、だからこそ面白くって次の巻も楽しみだ。

【感想】負けヒロインが多すぎる!

早稲田大学負けヒロイン研究会に触発されて買っちった。

 

 

ガガガ公式サイトからあらすじを引用

負けて輝け少女たち!

クラスの背景である俺――温水和彦は、人気女子・八奈見杏菜が男子に振られるところを目撃する。「私をお嫁さんにするって言ったのに、ひどくないかな?」「それ、いくつの頃の話?」「4、5歳だけど」それはノーカンだろ。これをきっかけに、陸上部の焼塩檸檬、文芸部の小鞠知花など、負け感あふれる女子たちが現れて――? 「温水君。女の子は2種類に分けられるの。幼馴染か、泥棒猫か」「なるほど、大胆な分類だ」……負けてこそ輝く彼女たちに、幸いあれ。負けヒロイン――マケインたちに絡まれる謎の青春が、ここに幕を開ける!

 

 私は負けヒロインが好きで、特に吹っきれないで、くどいくらいに引き摺るのを見ると気持ちよくなってしまう。なのでこうやって負けヒロインをメタ的に捉えて作品に落とし込んでくれるのはすごい嬉しい。

 

この1冊のあいだになんと女の子が3人も失恋していった。そのたびに訪れるなんともいえない感傷がまた良いんだよね…

 

こういうのを上手くできてるのって、主人公がかなりおいしいポジションにいて、一定しているのもある。間接的には関わっても、直接的に恋愛に介入してめちゃくちゃにすることはない。傍から眺める、つまり観測者の役割を与られているわけだ。達観ぼっちと紹介されているが、そうであるために時に読者に想定される気持ちを代弁してくれる。最後の方で少し動いても、「お前はそういうやつだよな…」とある種の愛嬌を感じる造形になっていて、うらやましいかぎりだ。

 

で、個人的にこの作品ですごい楽しかったのは、表紙にいる女の子、八奈見杏菜が失恋したうえにいい具合に嫉妬しつづけて引き摺っていくのを見ることだ。すでに試し読みできる範囲内で彼女は失恋する。その仕方がテンプレートをまんま 沿ったような感じでさ、もうギャグだった。その直後の愚痴や、その後たびたび吐かれる好きだった子の惚気を見ての愚痴が、まさに欲しいもので気持ちよく響く。もうそういったところまでプロの幼馴染だ。敬服する。

 

2巻以降の刊行が決まったらしい。めでたい。今後もどんな負けヒロインが出てくるか楽しみだ。

【少女漫画入門日記 その10】夢色パティシエール

突如マンガMee!にて始まった全話公開!それでイッキ読み。

 

 

ケーキ大好きな女子中学生の主人公がその感受性を天才パティシエに見出されて名門の製菓学園に入学することになる。無論素人同然なので初めのうちは全くなにもできない。しかしながら色々なイケメンに助けてもらたっりして段々上達していくという感じ。それでも彼女には長い間の修練がないため、上手ではないほうですが、彼女にはその天性の感受性と圧倒的な発想力によってカバーしていく。

 

主人公、かなり我慢強くってできないことがわかるたびに努力していくので見ていて応援したくなってくし、彼女の天性の感受性と発想力でどんどん周りを引き込んでいく、夢があるね~

 

ただ、彼女のその実力不足を補うような発想力に嫉妬する人間とかがあまり描かれていなくて、お綺麗な世界だなぁとも思ったり。本編のあとの後日譚にあたるアラカルトで一瞬描かれたけど、周りを暖かくするようなものでそれに見入られてほぐされていってしまう。

 

しかし、全体でみるとそんなに違和感があるものでもないし、スイーツはおいしそうだしで読む手の止めどころがなかなか見当たらない作品だったので、読んで良かったと思える作品。

【感想】リボンの騎士

萩尾望都の『私の少女漫画講義』で少女漫画の走りとして紹介されていたのでそれで読んだ。

 

 

初めと終わりで私の体は女の子なのよと言うわりには、その間はずっと私は男なの女なのと悩むので、ちょっと台無しだなと思ったりもしたけど、全体の出来がすごくよかったのでそんなのに目くじらを立てないで楽しんだほうが良かったなと感じた。

 

男の子の心と女の子の心というのが生まれる前に与えられてそれになるという世界で、女の子の心を与えられうべき子が男の子の心も同時に与えられてしまい、さらに生まれたのが女の子でありながら、王子として振る舞わないといけない立場になければならない、という感じ。

 

そういう世界での話なので男らしさ女らしさというのがかなりしっかりとした形であらわれて、ぶつかりあう。そういう世界でかつ男性の方が権力が強い。話は女性の権利を主張していくようなものを感じた。
少女漫画の源流の一つになりえたのは、女の子でありながら男の子と張り合ってぶつかっていくサファイアの姿だそうです。そういった願いを汲み取れる作品なので納得である。

 

コマ割りがかなり現代のもに近いなと感じた。偏見だが、昔の漫画ほどかなりキツいコマ割りをすると思っていて、しかしこの作品はかなり余裕のある感じ。それでも話がかなりの密度で進んでいく。バランス良い。

 

展開はまさに息をつく間もないという感じ。サファイアが女であることがバレるかもしれない?だけでなく、サファイアが恋している男と結ばれるか?など、複数の話が順番に進展していく。それでいてゴチャゴチャしていてわからね~ってことにならずに、スッキリと頭に入ってくる。すごい上手。

 

短くまとまっていながら、満足度も高くて良かった。