青ペンギンの日記

i46bは基本的に漫画や小説のレビューをします。時として思索した跡を残していくと思います。

【感想】ショーシャンクの空に

なにかと耳にする洋画タイトルで、今年発売したあるゲームでこの映画の要素が取り入れられていると聞き、すごく興味が湧いたので観ました。

 

ストーリーの内容全体をそれなりにまとめて、ちょこっと感想を書こうと思います。

 

 

プロゴルファーと逢引していた女性が殺された。逮捕されたのは、被害を受けた女性の夫アンディ。優秀な銀行員であったアンディは妻が不貞を働いたことに腹を立てて、間男と一緒に殺害した容疑で終身刑となり、ショーシャンク刑務所に入ることとなる。
アンディは当初ほかの囚人に溶け込まなかったが、1ヶ月経ったころに自身の鉱物収集趣味のためにロックハンマーを配達人レッドに頼むところから交友しはじめる。
さまざまなイベントを通してアンディは囚人の中に受け入れられつつあったが、一方で彼を執拗に囲い犯してくるクズの囚人もいた。が、そのクズの囚人たちも一度派手にやらかしてしまったのちに病院に入院し、アンディは安全な身になった。レッドたちはアンディを快く迎え入れようと女優のポスターを送るなどしていた。アンディはそれを飾っていた。さてアンディの教養と学識の高さから図書係に任命される。ずっと係をしていたブルックスと打って変ってアンディは図書館を拡充しようと議会に手紙を送っていた。さて、刑務官たちはアンディに自分たちの税務管理や資産運用を手伝わせていた。
いくばくか時が経ち、ブルックスの仮釈放が決定した。が、ブルックスはかれこれ50年もショーシャンク刑務所におり、外の世界が怖がった。実際にシャバに出ても、うまく馴染むことができずに自殺してしまう。刑務所に来た当初は恐れた塀が馴染んでくると自分たちを守ってくれるものになる。囚人たちが徐々に刑務所から抜け出せなくなっていく末路がよく出ている。絶望に囲われて、絶望と友達になっていくのだ。
アンディが『フィガロの結婚』のレコードを見つけ、刑務所全体に放送するという出来事が起こる。曰く、「音楽と希望は誰にも奪えない」らしい。しかしレッドは、希望は塀の中では危険なものだから捨てろと言う。絶望に馴染み希望を拒絶していくのだ。
ところでアンディの努力甲斐があったのか、図書室は徐々に拡充され始めた。音楽を聞けるようになったり、さまざまな本が置かれて、賑いを見せる。が、所長は不正を企てはじめ、貯蓄しはじめた。特にアンディを会計係を任命して不正に金を溜め込んだ。
アンディが入所してからおよそ20年足らずの時が経った。トミーという強盗の罪で捕まった男がショーシャンク刑務所にやってきた。彼はアンディに頼み込んで高卒資格を取るために教えてもらうことにする。1年努力し、ついに申請をしたころ、トミーはアンディの罪には別の真犯人がいると知っていると語る。アンディはそれで再審請求を考えるが、所長はアンディにいなくなられると困るので懲役房にいれ、トミーを殺す。それでも尚アンディは再審を諦めず、不正経理の告発をちらつかせて駆け引きをするが、所長は折れず懲役を延ばす。
最終的にアンディが折れて会計係を続けることに。しかしその頃からアンディの調子がおかしくなり、レッドに外の世界出たらなどといった希望を語ったりする。レッドらお友達らに不安な色が見え始めたある嵐が過ぎ去りし日、アンディが刑務所から消える。
部屋のポスター裏に穴が発見されたことから脱獄したと発覚する。アンディは不正経理の際に作った偽の名義を騙り、金を回収した後に太平洋の方へ行ったらしい。脱獄前夜にアンディが送った告発状のためにショーシャンク刑務所にいる刑務官や所長らに逮捕状が出される。所長は拳銃で自ら自決した。
そうしてショーシャンク刑務所に新しい風が流れ始めたころ、レッドは服役40年目を迎えて仮釈放される。が、ブルックス同様に外の世界に馴染めずひしひしと死を考え始める。そのときにアンディと彼が脱獄する前にした会話を思い出し、その頃の会話を便りにアンディの伝言を発見する。かくして仮釈放違反を起こし、レッドはメキシコへ向かう。そこで太平洋を前にアンディと再会を果たす。

 

 

話の終わり方が、アンディは刑務所という枠に収まらない人間で、刑務所の空から飛び立っていったという風な表現をしていた。実際にアンディが嵐の中脱獄を決行し、大雨の中、手を広げるところは有名なため、そこに意味を見出そうかと思ったが、それよりも服役中の様子から作られる様々な構図とその変遷を考えるほうが大事な気がした。

シャバがあり、塀に囲われる形で刑務所がある。その中にある刑務所社会。囚人と刑務官の力関係、囚人内での交友関係の揺れ動き。基本的に囚人が男しかいないため、恋愛を抜きにした人間関係が描かれる。特に印象深かったのは、屋根修繕のさいにアンディが刑務官と駆け引きして囚人たちにビールを振る舞ったところだ。正直アンディの意図が見えなくて怖いシーンではあるが、そこでアンディの評価が上がる契機となった。単純なシーンだが、レッドたちがアンディを友人と見なし、その先での協力が生まれる重要なところである。

そのようにして強固な関係を作っていく傍らでアンディは脱獄の計画を進めていたのもまた面白い。最終的に刑務所内の権力構造から脱出する形でアンディは出ていくわけだが、その脱獄に他の友人たちは知らず知らずのうちに巻き込まれているのみで脱獄をしていない。それは囚人たちが刑務所から出る勇気がないのを知っているからだろうが、それでも刑務所内で築いた人間関係を捨てていくのに衝撃を受けた。ある種強行したとも取れるこの行動のために、アンディが刑務所内の種々の関係に囚われない自由な存在であることがより強調される。

レッドにだけ脱獄したあとの行き先を伝えているところに、ある種男色に似たものを感じる。だが、この結末で提示される関係はアンディが囚人にレイプされたり、刑務官が囚人を扱ったりするような暴力的関係と対比される。

 

さて、エンタメ的に楽しめる側面ももちろんあった。ロックハンマーやポスターが伏線となっていたのはわかりやすいものであったが、少し驚いた。写されるのが閉鎖的な空間のみであったため、最後に風穴を空けてくれたような気持ち良さがあった。

 

塀の中の変わっていかない淀んだ日常が楽しめた良い作品だった。