【少女漫画入門日記 その9】半神
萩尾望都が描いた伝説的な短編読み切り。たったの16頁でこんなに面白い!とよく聞く。実際面白い。
萩尾望都の短編集。この作者の短編の中で一番有名だろう。この短編集も表題作がずば抜けて面白かった。
『半神』は卵胞の時期にきれいに二分されなかった故、一卵性双生児になりきれずに腰のあたりでくっついて一人として生まれてしまった双子の話。片方は頭が弱いがすごい見目麗しいユーシー、もうひとりは頭はいいがみすぼらしい見た目のユージー。ユージー視点で話が進んでいく。ユージーはその見た目ゆえにユーシーの付け合せでしかなく、満足に生活できないユーシーの介護ばかりしていて、不憫だと嘆き続けたある日、手術で切り離せるという話になった。ユージーは喜んで受け、手術は成功。ユージーの人生は上向きになる。しかしながら、彼女の脳裏には、切り離されて養分を満足に得られなくなり干からびて死んでいったユーシーがいる。彼女の見た目は切り離せる前のユージーそのものだった。豊かになっていくユージーは、それ以降ときどきユーシーがいなくなったことに涙を流す。
教訓的な話で、バッドエンドのような感じだが、劇としての落としもうまく、舌を巻く出来栄えである。
さて、この短編集のなかで『半神』がもっとも面白いとは言ったが、他の作品のできばえが悪いわけではまったくない。珠玉の短編が集まっている。萩尾望都、まず絵がうまいから手を抜かないで作るとそれだけで見栄えがいいんだよな……それだけでなく少女漫画なのにSF!恋愛話も多いがそれ以上にSFが多い。何なら恋愛はストーリーのスパイスのアクセント。
『真夏の夜の惑星』とかかなり面白かったな。兄弟同士、姉妹同士で互いの持っていた複雑な感情をぶつけ合って和解する感じ。それが大きなハスが蕾になって開花するのに重ねられているのとか、モチーフとの重ね合わせもあってキレイだった。
別に萩尾望都の作品、美少年の作品ばかりが面白いわけではないんだね……ゴツいおっさんとか爺とかが主要キャラに出てきても上手い〜ってなる。
他の短編も読んでみたくなった。『イグアナの娘』とか。