青ペンギンの日記

i46bは基本的に漫画や小説のレビューをします。時として思索した跡を残していくと思います。

【感想】踊り場にスカートが鳴る

コミック百合姫2020年10月号の新連載でこの作品を読んたときの衝撃は忘れられない。

 

 

社交ダンスは普通男女ペアでの競技だが、その競技人口の男女比から女性同士のペアがありうる……どちらかが男性役(リーダー)を、もう片方が女性役(パートナー)を体格差から決めて練習するのだが、主人公の春間ききはパートナーをやりたいのにも関わらずその高身長故にリーダーの方に適正があり、そちらの方が似合っているからとリーダーを演じていた。そこに長年のペアから渡される解散宣言、ききはそれを受け入れられないまま新たな自分のペアを探すことになる。経験者であり、小柄で可愛らしい少女である鳥羽見みちるが現れる。似合わないであろうリーダー役を志望するみちるとの出会いが、ききを変えていく……

 

 

私は似合うこと、得意になりやすい方を選択する方が楽だと思ってるので、どちらかというと押し付ける側にいるんですが、それは私に強くなりたいものがないからなんですよね~~。あるいはなりたいものと得意なものが一致していただけだったり。

 

ききはなりたい可愛い自分があってもそれは自分には似合わないと表に出さない。それが、それが表にちょっとでちゃった時があって、それがみちるに見つから。みちるはそのパートナーを演じるききに惹かれて、「似合う役(リーダー)をするのがいいと思っていた」ききに「本当にそれで良いんですか?」と問いかける。いいわけないだろ!

 

そういうわけでなりたい自分があるのって羨ましい……羨ましいね……

 

でもなりたい自分へと向かっていくって決めても、簡単にいくわけではないんですよね。やっぱり、背の小さいリーダー、大きいパートナーは不恰好になるので上手くいかなかったり。

 

きき、パートナーをやると決めても練習しているときに注目されたら萎縮しちゃって、やっぱり無理なのかなぁ……と悩んだり。なんども立ち止まるんですよ。そうやって足踏みするのが、刺さる…とても人間らしい。一人で自主練しながらも、周囲の視線を思い出し、「やっぱり……」って三角座りしてひとりごちるの、良さ……

 

この作品で私が特に好きなのは、作品の見所を実際に社交ダンスしているシーンに持てきており、その描写がとても丁寧で、美しい作画で描くところですね……たとえば第1話のここ。

 

 

 

はぁ……綺麗……好き……

 

このシーンがそれまでの展開で溜めた分をしっかり解放していて、気持ちがいいところ。初めてここまで読んだとき、この遷移が美しすぎてなんども返ってみかえした。とりあえず任意の人間にここまで読んで欲しい。

 

この作品は作画の美麗さと選択するテーマ、社交ダンスという媒介が調和していてある種、詩的とすら言える清らかさを醸しだしている。もっと有名になってくれ……