青ペンギンの日記

i46bは基本的に漫画や小説のレビューをします。時として思索した跡を残していくと思います。

【少女漫画入門日記 その6】トーマの心臓

萩尾望都の名前はあらゆる方面から聞き及んでいたのでいつか読みたいと思っていた。そしたら大学の図書館に『トーマの心臓』だけおいてた。反射的に手を伸ばして借りて読んだ。

 

 

あらすじをAmazonの内容紹介から引用

 

ギムナジウムの少年たちを描く歴史的傑作。

 

冬の終わりのその朝、1人の少年が死んだ。トーマ・ヴェルナー。そして、ユーリに残された1通の手紙。「これがぼくの愛、これがぼくの心臓の音」。信仰の暗い淵でもがくユーリ、父とユーリへの想いを秘めるオスカー、トーマに生き写しの転入生エーリク……。透明な季節を過ごすギムナジウムの少年たちに投げかけられた愛と試練と恩籠。今もなお光彩を放ち続ける萩尾望都初期の大傑作。

 

作品検索かけたら「トーマの心臓 わからない」がサジェストされて笑っちゃった。何回と言われているらしい。でも、面白いよ。

 

萩尾望都といえば『ポーの一族』だと思ってたが、『トーマの心臓』を挙げる人もたまにいて、前から興味があった。今『ポーの一族』も読んでいて、セリフ回しがとても詩的というのを実感する。どこかの記事で、「漫画は絵が主役だからセリフとかを少なくしようとしている」みたいなのを見たけど、言葉少なにしたら詩的になったとかそういうものなのだろうか。今の漫画のほうがセリフ量少ないぞ!

 

作画も丁寧、セリフも詩的でとてもお上品だなと思った。読んでいる感覚は漫画を読んでいるというよりも小説を読むような感覚。それも日本文学というよりも海外文学の方に近い。

 

これを読んだあとに、『100分de名著』の萩尾望都特集を読んだので、以下の感想はそれを踏まえたものになってる。

 

 

男性しかいない寄宿学校、正確にはギムナジウムが舞台なので基本的に女性キャラが出てこないんですよね。これまでに読んできた少女漫画って多かれ少なかれ男女の恋愛が絡んできたので、むしろ少年しかいない!となるのは初めて。別に完全に排除されてるわけではなくて、少しは出てくるんですけどいるだけでストーリーの本筋に関わってこなかったり。

 

そういった空間の中で美少年たちが「愛」について巡り合っていくんですよ。ときめいちゃうね。

 

探りを入れてみたら、BLの大本をたどると『トーマの心臓』と『風と木の詩』の少年愛にたどり着くらしい。知見だ。

日出処の天子』にも同性愛の話しがあるらしいし、こういった作品たちを礎として今のBL文化があると思うと感慨深い。

 

逆に私はここらへんから百合文化との対称性を思い出した。曰く、『トーマの心臓』ではいずれ巻き込まれてしまう支配非支配の構造を崩す試みをしている、と。現代の百合漫画は多くの場合女の子同士が対等な関係を結ぶという終わりが多く、なるほどこの作品が示そうとしたところに行き着く。とてもキレイ。

 

またこの作品内で女性が疎外されていることも、一般的に百合作品で男性が疎外される傾向にあるのを思い出させる。女性向け作品で女性を排除するのは、それを見ることによって引き起こされる現実を排除するためと聞くと、男性も同様なのだろう。男を見ることで私に現実を呼び起こさないでくれ!

 

トーマの心臓は百合だった……??

 

いろいろと書きましたが、とても上品で知的な作品で他にも萩尾望都の作品を読みたいと思わせるいい作品でした。