青ペンギンの日記

i46bは基本的に漫画や小説のレビューをします。時として思索した跡を残していくと思います。

作品紹介:『私の推しは悪役令嬢。』

紹介ということなので本質をついたネタバレはしません。

『私の推しは悪役令嬢。』周りについて

この作品は「小説家になろう」、「カクヨム」、「Pixiv」などで連載されているウェブ小説が元です。以下が「小説家になろう」でのこの作品のリンクです。

https://ncode.syosetu.com/n8792em/

書籍化されていますが、Kindleでのみです。Kindle Unlimitedなら無料で読めます。紙媒体では出ていません。以下がAmazonのリンクです。

 

 

 

コミカライズも決定しており、コミック百合姫で連載しています。

 

私の思い

コミック百合姫でのコミカライズ連載を読んで私はこの作品に興味を持ちました。前述の通り紙媒体で出版されていないので小説家になろうで読みました。

そこで私は衝撃的なものをたくさん体験しました。と同時に、この作品の素晴らしさに比べて、現在の人気は物足りないとも感じました。

しかし、電子媒体でのみなので本屋に足繁く通う人には存在を認知しづらいです。だから広まりづらいのもうなずけてしまいます……

というわけで、いかにして広めるかを考えた末にこのブログで何が面白いのか、何が良いのかを発信していこうと思いました。

この物語は完結済みの第一部と連載中の第二部に分かれており、Kindle版の1巻2巻が第一部、第三巻(とそれ以降)が第二部となっています。このブログでは第一部のみの紹介とします。

以下では三つの面から、この作品を紹介していきます。

  1. ストーリー面
  2. キャラクター面
  3. その他

 

1.ストーリー面での面白さ

はじめに小説家になろうでのあらすじを引用します。

乙女ゲームのヒロインですけど、悪役令嬢のことが好きじゃダメですか?」

乙女ゲーム「Revolution」の世界にヒロイン、レイ=テイラーとして転生した社畜OL、大橋 零。
彼女の推しは攻略対象の王子様たちではなく、悪役令嬢のクレア=フランソワだった。
クレアのいじわるを嫌がるどころか嬉々として受け入れるレイ。
巻き込み系主人公が送る、異色のラブコメの始まりである。
こじらせた愛をレイに向けられた悪役令嬢、クレアの明日はどっちだ?

変化球な悪役令嬢シリーズ第二弾です。
普通とは少し……ほんの少しだけ違う悪役令嬢モノをお楽しみ頂ければと存じます。

 簡単な見どころの紹介です。序盤はテンポの良いコメディ的なやりとり、中盤さ広がっていく人間関係、終盤は緊迫感あふれる展開。初めから終わりまで飽きることなく読めます。

 

詳しくなにが面白いのかを述べていきます。

 

 序盤は、言ってしまえば物語上の出来事はほとんど主人公の掌の上で進んでいきます。なにせ主人公は物語の舞台となるゲームをやり込んで設定などを暗記しているというのだからです。

しかしながら、主人公が王子たちよりも悪役令嬢を熱心に追いかけていることを代表に、数々の点で本来のストーリーから離れたことをしていきます。そのズレに面白さがあります。

 

 中盤は、主人公にとって予想外なことが多く起こります。そもそもの出発点が元となるゲームシナリオと比べて甚だしく異なるため、この辺りからいくらかの差異が生まれてきます。その過程で、ゲームの設定資料集の内容をほぼほぼ覚えている主人公ですら知らない設定まで出てきて……

この辺りからゲームの大枠となる社会構造および社会問題、新キャラクターなどが登場し、物語の風呂敷はどんどん広がっていき、ワクワクします。

 

 終盤は、今まで積み重ねてきたものを用いて主人公が最後の試練に立ち向かっていく話になります。広がった風呂敷が物語の結末に近づくにつれて畳まれていく様子には感嘆します。

何かについて語ろうとすれば、その前の展開に触れざるを得ないため多くを記すことはできないため、緊迫感あふれる最終盤はドキドキが止まらないと述べるに留めます。

 

以上がストーリー面でのレビューです。

 

2.キャラクター面での面白さ

 この物語の登場人物もまた魅力的です。物語の序盤は日常的な風景が多く、その中でのキャラクターたちの掛け合いが良いのです。

 

 主人公のレイ=テイラーはこの小説の主観を担っていますが、悪役令嬢であるクレア様に見せる偏愛っぷりが前面に押し出されており、序盤のコメディ的なやり取りの中心にいます。その一方で第一部を通して最もっとも成長した人物と言えます。彼女をいくつもの困難が襲ってきます。それは彼女の恋愛を試すもので、その度に彼女の覚悟は深まっていきます。この小説は彼女の恋愛のために綴られたものと表現できるほどです.

 悪役令嬢であるクレア=フランソワはレイにいじられるキャラとして序盤は描かれています。その様は愛らしく、ウザさを感じません。話が進むごとに大きく変化し、成長していくキャラクターでもあります。どのように変わっていくのかをぜひ見届けて欲しいです。

 

 他にも多くのキャラクターが存在しますが、ストーリーに触れることなしに語ることはできないので留めておきます。

 

3.その他

 その他とまとめましたが、思想面や精神面と書いて良かったかもしれません。

 

 この小説はレイが同性愛者であることを明示し、その恋愛を真っ向から描いています。そして、友情か恋愛かを選ぶのではなく、初めから恋愛でスタートしています。

 

 何が他の物語と一線を画すのかと言えば、ここにあります。

 私の中では、ここまで丁寧に同性愛者の恋愛を丁寧に描いた小説が初でした。もし小説家になろうで触れてみようとするのでしたら、まずは「15.リリィであるということ」まで読むことを勧めます.そこを起点にして物語が一層深くなるからです.こういったマイノリティを扱った部分は他にもあります。そこに光ものがあります。

 

 また、私はこの物語を「救いのある物語」と形容しています。主人公たちは最終的に幸せになっているという点のみならず、作中で描かれるさまざまな苦しい時間を過ごした人間も精神的に救われていることが多いからです(無論、いくらか例外があります)。そういった人が救われている場面が出てくるごとに読んでいる方も暖かい気持ちになれます。

 

結びに

 『私の推しは悪役令嬢。』の魅力の中で私が感じ取ったものを上に記しました。この小説はエンターテインメントとしての恋愛物語と、百合という同性愛の描写を高いレベルで両立している名作です。ぜひご一読ください。

 

https://ncode.syosetu.com/n8792em/